錦衣夜行 最終回(第60話)では、夏潯が選んだのは官船を燃やして自分たちが死んだと思わせる方法でした。朱棣に仕え、靖難の役から長く朝廷を支えてきた夏潯が最後には自分の存在を消して自由になるという結末です。
しかも謝雨霏とは新しい人生を始められた一方、唐賽児には本心を隠したまま「利用しただけだ」と告げて別れることに。
2年後、夏潯は世間では死んだ英雄となり、本人は髭を生やして謝雨霏と暮らしていたのでした。
朱棣と一緒に国を作るように戦ってきた夏潯が、最後には朱棣から離れなければ生きられなかったと思うと少し寂しいですね。それでも名誉や官位ではなく、謝雨霏と生きていくことを選んだ夏潯のラストは、このドラマらしい終わり方だったと思います。
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この記事にはネタバレがあります。
『錦衣夜行』最終回のあらすじ
夏潯が官職を捨てて金陵を去る
紀綱との争いが終わっても、夏潯が安心して朝廷に残れるわけではありませんでした。飛龍密諜まで作り、錦衣衛にも協力者を持つ夏潯は、朱棣にとって功績の大きな臣下であると同時に、無視できない力を持った人物になっています。
夏潯は輔国公など朝廷で得た地位を捨て、表向きは蜀へ向かうことになりました。しかし蜀へ行けば朝廷には居場所を知られたままです。夏潯はそこまで含めて朱棣の支配下から離れようと考え、謝雨霏とともに金陵から姿を消す準備を始めました。
計画に協力するのは西門靖や彭梓琪たちです。夏潯はただ都から逃げるのではなく、朝廷から「夏潯は死んだ」と思わせるところまで考えていました。
唐賽児には本心を明かさずに別れる
夏潯が金陵を去ると知った唐賽児は自分も一緒に行くと言います。ところが夏潯は連れていきません。
ここで夏潯が選んだ方法がかなり厳しい。「紀綱と戦うためにお前を利用しただけだ」という意味のことを本人に言い、わざと嫌われようとします。
もちろん本心ではありません。自分についてくれば唐賽児まで朝廷に追われる可能性があるので、関係そのものを断とうとしたのでしょう。事情を話せば唐賽児はそれでも一緒に行くと言うかもしれません。それなら自分を嫌いになってもらうしかない。夏潯はそう考えたようです。
唐賽児はその言葉を信じて傷つき、泣きながら去っていきました。
左丹が埠頭で夏潯を襲う
翌日、夏潯と謝雨霏が船で金陵を離れようとすると、錦衣衛副千戸の左丹が兵を連れて埠頭へやって来ます。目的は夏潯の殺害です。
ところが左丹には大きな誤算がありました。連れてきた兵の中には、夏潯が以前から作っていた飛龍密諜の者たちが紛れ込んでいたのです。
左丹が夏潯を殺すよう命じても、兵たちは夏潯ではなく左丹へ武器を向けます。夏潯も手弩で応戦し、左丹は夏潯を仕留めることができませんでした。
皇帝が考えを変えて助けてくれるのを期待したわけではなく、夏潯は自分で逃げ道を準備していたことになります。紀綱との争いの中で作ってきた人脈が、最後には自分自身を朝廷から逃がすために使われました。
官船を燃やし、夏潯と謝雨霏は「死亡」する
左丹を倒したあと、西門靖や彭梓琪たちは予定どおり官船に火をつけます。
朝廷から見れば夏潯と謝雨霏は燃える船とともに死亡したことになります。しかし二人はすでに脱出していました。
ここまでやる理由ははっきりしています。蜀で暮らせば「元輔国公の夏潯」として朝廷との関係が続きます。朱棣が再び警戒すれば、いつ錦衣衛が送られてきてもおかしくありません。
死んだことになれば事情は違います。探すべき人物そのものがいなくなるからです。夏潯は官職を辞めただけでは足りないと考え「朝廷に仕えていた夏潯」という存在まで消しました。
唐賽児が尼僧になる
それから2年後。唐賽児は寺に入り、夏潯の無事を祈っています。
これがなかなかつらい。唐賽児は夏潯から言われた言葉が嘘だったとは知りません。夏潯が自分を危険に巻き込みたくなかったことも、実は生きていることも知らないままです。
一方、朱棣も夏潯のことを忘れてはいませんでした。宝船を使った海外事業について報告を受ける中で、かつて自分を支えた夏潯を思い出します。
二人は靖難の役以前から長く関わってきました。それでも最後には皇帝と臣下として一緒にいることができなくなった。その関係が元に戻ることもありません。
夏潯と謝雨霏は生きていた
街では講釈師が夏潯の活躍を英雄物語として語っています。世間では夏潯はすでに亡くなった人物です。
ところが、その話を聞いている客の中に髭を生やした男がいます。
夏潯本人です。
隣には謝雨霏がおり、彼女のお腹には夏潯との子供がいました。
朝廷では輔国公まで務めた夏潯が、自分の英雄物語を名もない客として聞いている。
なかなか面白い終わり方です。本人はもう朝廷で名を残すことにも、自分が生きていると世間に知らせることにも興味がないのでしょう。
主要人物の結末
・夏潯:謝雨霏とともに生存
輔国公など朝廷で得た地位から離れ、西門靖や飛龍密諜の協力を得て自分の死を偽装しました。2年後には髭を生やして身分を隠し、謝雨霏と暮らしています。
・謝雨霏:夏潯と新しい生活を始める
夏潯とともに船で死亡したと思われますが、実際には脱出しています。2年後には夏潯の子供を身ごもっていました。
・唐賽児:夏潯と別れ、出家する
夏潯から「利用しただけだ」と告げられ、彼のもとを去ります。2年後には寺に入り、夏潯の無事を祈っています。
・朱棣:皇帝として明を治め続ける
夏潯を警戒した結果、二人は別々の人生を歩むことになりました。2年後にも夏潯を思い出しており、長年自分を支えた人物への思いは残っています。
・左丹:夏潯の脱出を阻止できず敗れる
兵を率いて埠頭へ向かい、夏潯を殺そうとします。しかし兵の中に飛龍密諜が入り込んでおり、夏潯の反撃を受けて敗れます。
・西門靖:夏潯の脱出に協力する
夏潯から頼まれ、船を使った死亡偽装に加わります。夏潯と謝雨霏を朝廷から逃がすため、最後まで仲間として行動しました。
・彭梓琪:夏潯の計画を助ける
西門靖とともに夏潯の脱出に協力します。夏潯が朝廷から姿を消すための計画を成功させました。
ラストシーンの意味
最後の場面では講釈師が英雄としての夏潯を語っていました。その話を死んだことになっている夏潯本人が聞いています。
夏潯たちの死亡偽装が成功して、すでに世間では夏潯は完全に過去の人物になっています。それと同時に、朝廷での夏潯の人生が終わったことも表しているのでしょう。
夏潯は朱棣を支えて靖難の役を戦い、朝廷で地位を得ました。その一方で皇帝に警戒される存在にもなりました。
最後には官職や名前も立場も捨てています。その夏潯が自分の活躍を他人事のように聞いているのですね。自分が英雄として語られているのを聞いても、名乗り出ようとはしません。
ここまで見れば、夏潯が最後に選んだものはかなりはっきりしていますよね。朝廷で出世して権力を得たり、裕福になったりすることより、朱棣にも錦衣衛にも命令されず、謝雨霏と自分たちの生活を送ることを選んだのでしょうね。
最終回の注目点
夏潯はなぜ唐賽児に本当の理由を話さなかったのでしょうか?
唐賽児は夏潯と一緒に金陵を離れようとしました。しかし夏潯は、自分と行動すれば唐賽児まで朝廷から狙われる可能性があると考え、「紀綱と争うために利用しただけだ」という趣旨の嘘をつきます。
夏潯としては、唐賽児を危険から遠ざけるためには、自分を諦めさせるのが確実だと考えたのでしょう。
ただし、唐賽児から見ればかなり一方的です。夏潯は事情を説明したうえで唐賽児本人に判断させる方法を選びませんでした。その結果、唐賽児は自分が利用されていたと思ったまま別れ、2年後には寺に入っています。
夏潯が守ろうとした意図は分かりますが、そのために相手を傷つける必要があったのかという疑問は残ります。
夏潯はなぜ蜀で暮らさず、死を偽装したのでしょうか?
夏潯が普通に蜀へ行けば、朝廷は彼の居場所を把握できます。朱棣が再び夏潯を警戒すれば、監視を付けたり、錦衣衛を送ったりすることもできます。
夏潯は飛龍密諜を作り、錦衣衛の内部にも協力者を持っていました。それだけの力を持つ人物を、皇帝が完全に気にしなくなるとは限りません。
そこで夏潯は官船を燃やし、自分と謝雨霏が死亡したことにしました。「蜀にいる元輔国公」では朝廷との関係が残りますが、「死亡した夏潯」なら朝廷の監視から離れられます。
夏潯は金陵から逃げただけではなく、朝廷に知られている自分の人生そのものを終わらせたのです。
朱棣は夏潯が生きていることを知っていたのでしょうか?
最終回では、朱棣が2年後にも夏潯を思い出しています。しかし朱棣が夏潯の生存を知っているとは明言されません。
船を燃やした計画は、夏潯と謝雨霏が死亡したと思わせるために行われています。街でも夏潯は死んだ英雄として語られているため、少なくとも世間には生存が知られていません。
朱棣が真相を知ったうえで見逃したのか、それとも本当に死亡したと考えているのかについては、劇中の描写だけでは断定できません。
唐賽児はなぜ最後に尼僧になったのでしょうか?
ドラマでは唐賽児が夏潯から拒まれ、2年後には寺に入っています。そのため物語だけを見ると、夏潯との別れをきっかけに俗世を離れたように見えます。
ここには実在した唐賽児に関する逸話も使われていると考えられます。史実の唐賽児は永楽年間に山東で反乱を起こし、明軍が仲間を破ったあとも捕まりませんでした。朱棣は唐賽児が尼僧に姿を変えている可能性を疑い、捜索させています。
ドラマの唐賽児と夏潯の恋愛は創作ですが、最後に唐賽児を尼僧として描いたのは、彼女に残る史実を利用した演出と考えられます。
『錦衣夜行』はハッピーエンド?
夏潯と謝雨霏については、ハッピーエンドと言ってよさそうです。
二人とも生き延びて朝廷から離れ、2年後には子供も生まれようとしています。
でも、すべてが丸く収まったわけではありません。唐賽児は夏潯の嘘を信じたまま別れています。朱棣と夏潯も以前のような関係には戻りません。
とくに朱棣との関係は、ドラマのラストとして考えると少し寂しいですね。夏潯は長く朱棣を支えて皇帝になるまで助けました。それでも最後には朱棣の支配から逃れるため自分の死まで偽装しています。
そこまでしなければ自由になれなかったということなのでしょう。
だから夏潯は官位も朝廷での立場も朱棣との関係も失いました。その代わり、謝雨霏と家族として暮らせる生活を手に入れました。
『錦衣夜行』の最終回は権力の中で生き続けるのではなく、そこから離れることを夏潯が選んだ結末だったと思います。
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